食道がんの重粒子線治療後に発症する大動脈・食道瘻(AEF)は希少だが致命的な合併症です。2026年『Gastroenterology Report』に報告された、Sengstaken-Blakemoreバルーン管による緊急止血後に大動脈腔内修復術(TEVAR)を成功させた症例を解説します。
2026年2月、『Gastroenterology Report』に掲載された日本の症例報告では、食道がんに対して重粒子線(炭素イオン)治療を施行した患者で、治療後数カ月に大動脈・食道瘻(AEF)が発症し、Sengstaken-Blakemoreバルーン管による緊急圧迫止血をブリッジとして大動脈腔内修復術(TEVAR)を施行、救命に至った事例が示されています。
重粒子線治療とAEF:遅発性・致命性合併症
重粒子線治療は日本では食道がん・縦隔腫瘍治療に広く用いられますが、照射後数カ月から数年の遅延で、被曝領域の食道壁と隣接する大動脈に組織壊死が生じ、両者の間に瘻孔が形成されることがあります。瘻孔が破裂すると大動脈の高圧血流が食道内に流入し、数分以内に致死性大量出血(二次破裂症候群)を引き起こします。発症率は極めて低いものの、一旦発症すれば予後不良です。
バルーンブリッジ止血とTEVAR
本症例では、緊急下に経口的にSengstaken-Blakemore管を留置し、食道側バルーンで瘻孔を直接圧迫して出血を一時的に停止させ、全身麻酔・ハイブリッド手術室準備・ステントグラフト装着までの時間を確保しました。TEVARにより瘻孔が封鎖され、大出血の再発なくバルーン管は安全に抜去されました。
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重粒子線治療を受ける際の注意点
照射野に胸大動脈が含まれる場合、遅発性血管合併症のリスクを考慮する必要があります。胸部放射線治療(重粒子線・陽子線・X線いずれも含む)歴があり、数カ月から数年後に突発的な胸痛・嚥下障害・吐血・黒色便が生じた場合は、AEFを強く疑い、胸腔外科と介入放射科が連携した医療機関に速やかに受診してください。また、治療前に照射野と胸大動脈の距離や処方線量を主治医に確認し、施設に血管急性症対応の予備計画があるかを把握しておくことをお勧めします。
本記事は公開情報に基づく参考情報であり、医療アドバイスではありません。診療については医師にご相談ください。
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